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Anthropicの内部資料から漏れた「Capybara」— Opusの上に第4のティアが存在する

Haiku、Sonnet、Opus。Anthropicのモデルラインナップはこの3層で完結している——はずだった。

2026年3月下旬、Anthropicの内部ドキュメント約3,000件がパブリックなデータストアに放置されていたことが発覚した。発見したのはLayerX SecurityのRoy PazとケンブリッジのAlexandre Pauwels。CMSの設定ミスが原因だ。

そこに記されていたのが「Capybara」という名前だった。

MythosとCapybaraの関係

ここが最も混乱しやすいポイントなので整理しておく。

Mythosはモデルの名前。「Claude Opus 4.7」のように、特定の能力を持つ学習済みモデルを指す。Capybaraはティアの名前。Haiku・Sonnet・Opusと同列の「製品カテゴリ」であり、性能と価格の階層を表す。

つまり「Claude Mythos」は「Capybaraティアに属する最初のモデル」ということになる。Opusティアに複数のモデル(Opus 4.6、Opus 4.7)があるのと同じ構造だ。

リークされたドラフトにはこう書かれていた。

Capybara is a new name for a new tier of model: larger and more intelligent than our Opus models — which were, until now, our most powerful.

Opusの上。これまでの最上位を超えるモデル群のための、新しい階層。

4層体系になると何が変わるのか

現在のAnthropicの料金体系はこうなっている。

ティア 代表モデル APIコスト(入力/出力・1Mトークン)
Haiku Claude Haiku 4.5 $0.80 / $4
Sonnet Claude Sonnet 4.6 $3 / $15
Opus Claude Opus 4.7 $5 / $25

Capybaraティアは、Project Glasswingの限定公開時点で**$25 / $125**という価格で提供された。Opusの5倍。入力1Mトークンあたりの価格だけで見ても、GPT-5.4 Pro($10 / $40)やGemini 3.1 Ultra($12 / $48)を大きく上回る。

ただし、この価格はProject Glasswing参加組織向けのものであり、一般公開時に変わる可能性はある。Anthropicは$100Mのモデル利用クレジットをGlaswing参加組織に提供しており、現時点で自腹で使っている組織はほぼない。

誰が使えるのか、そしていつ一般公開されるのか

現状、Capybaraティアのモデル(Claude Mythos Preview)にアクセスできるのは限られた組織だけだ。Project GlasswingのローンチパートナーとしてはAmazon Web Services、Apple、Broadcom、Cisco、CrowdStrike、Google、JPMorganChase、Linux Foundation、Microsoft、NVIDIA、Palo Alto Networksが名を連ねている。さらに約40の組織が追加で参加している。

Anthropicは「Mythosクラスのモデルを一般公開する計画は当面ない」と明言している。新たなセーフガードが整った段階でスケール展開したいとの方針だ。

正直なところ、これがいつになるかは読めない。Anthropicのセーフティに対する姿勢を見る限り、「半年後に一般公開」という楽観的なシナリオはないだろう。一方で、OpenAIがGPT-5.4-Cyberで類似の能力を提供し始めている以上、競争圧力から公開が早まる可能性もある。

Capybaraが意味すること

個人的に最も興味深いのは、Anthropicが「Opusの上」を公式に製品化した事実そのものだ。

これまでのティア体系は、ユースケースでの棲み分けが明確だった。Haikuは軽量・高速、Sonnetはバランス型、Opusは最高性能。3層で「速さ・コスト・性能」のトレードオフを網羅できていた。

4層目が加わるということは、「Opusですら足りないタスクが存在する」とAnthropicが判断したことを意味する。そのタスクとは、リークされた文書によればコーディング、学術推論、そしてサイバーセキュリティだ。

特にサイバーセキュリティ領域では、Mythos Previewがゼロデイ脆弱性を数千件検出したという報告がある。人間のセキュリティ研究者を凌ぐ速度と網羅性だ。この能力を一般公開できないのも頷ける。

とはいえ、「ティアが増える=ユーザーは嬉しい」とは限らない。選択肢が増えることでAPI設計の複雑さは上がるし、Opusの位置づけが曖昧になる可能性もある。Opusが「最上位」でなくなったとき、現在のOpusユーザーは何を感じるだろうか。

いずれにせよ、Capybaraの存在はAIモデルが「汎用的な賢さ」から「特定領域で人間を超える専門家」へとシフトしていることの証左だ。その最初の実験が、セキュリティという極めてハイリスクな分野で行われているのは、Anthropicらしい慎重さだと思う。

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