Character.aiのキャラが「昨日の会話」を覚えるようになった — PipSqueak 2の中身
「さっき話したこと、もう忘れたの?」
AIキャラクターと会話していて、この感覚を味わったことがある人は多いはずだ。長い会話を重ねても、キャラクターが文脈を失って同じ質問を繰り返す。設定した性格がいつの間にか崩れる。Character.aiを使い込んでいるユーザーほど、この「記憶力の壁」にぶつかってきた。

2026年4月14日、Character.aiはこの問題に正面から取り組んだアップデートを公開した。新モデル「PipSqueak 2」、そして長く待ち望まれていた「Lorebook」機能だ。
PipSqueak 2で何が変わったか
PipSqueak 2(PSQ2)は、現行のPipSqueakを置き換える次世代モデルだ。Character.aiのCEO Karandeep氏が直接発表した。
改善点は3つに集約される。
記憶の持続力が上がった。 会話の中で確立した設定やディテール——名前、関係性、過去の出来事——をPSQ2はより長く保持する。「さっき言ったよね?」と繰り返す回数が減る、というのが公式の説明だ。
表現力が増した。 応答がより多彩になり、同じパターンの繰り返しが減ったとされる。これは地味だが重要な改善だ。長時間の会話でキャラクターの応答がテンプレ化していく現象は、没入感を一気に壊す。
キャラクターの一貫性が上がった。 設定したキャラクターの性格や口調が、会話が長くなっても崩れにくくなった。
社内テストでは、ユーザーは一貫してPSQ2を旧モデルより好んだという。ただし、正直に言うと、海外のコミュニティでは反応が割れている。PSQ2を気に入っているユーザーがいる一方で、「応答の末尾に意味不明な文字列が出る」という、かつてDeepSqueakモデルで見られたのと同じ問題を報告するユーザーもいる。新モデル特有の初期不安定さだろうが、注視は必要だ。
Lorebookが解決する「世界観の壁」
今回のアップデートで最も反響が大きかったのは、モデルそのものよりもLorebookだ。
Lorebookは、キャラクターが存在する「世界」の情報を事前に定義できる機能。歴史、場所、人間関係、独自の用語——これまで会話の中で毎回説明し直していた背景情報を、構造化されたデータとしてキャラクターに持たせる。
面白いのは、Lorebookの情報が常に全部読み込まれるわけではないこと。会話の文脈に応じて、関連するLoreが自動的にサーフェスされる。ファンタジー世界の酒場の話をしていれば、その街の情報が引き出される。別の街の話に移れば、切り替わる。
これはロールプレイやストーリーテリングを本気でやっているユーザーにとって大きい。100回目の会話で「この世界には魔法があって……」と説明し直す必要がなくなる。
Lorebookはまずc.ai+メンバーに提供され、その後数ヶ月かけて全ユーザーに展開される予定だ。
メモリシステムの強化
PSQ2やLorebookと並んで、メモリシステム自体もアップグレードされた。
新しいメモリページには拡張カテゴリが追加され、髪型、目の色、癖、好みなどの細かいディテールを追跡できるようになった。さらに、チャット内でメモリが記録されるとリアルタイムで通知が表示される。
これまでのメモリは「何を覚えているのかがわからない」という不満があった。通知機能で透明性が上がったのは素直に良い改善だと思う。
料金と利用条件
Character.aiは基本無料で使える。有料プランのc.ai+は月額$9.99(約1,500円)、年間プランなら$94.99(月あたり約$7.92)。
PSQ2は現在c.ai+メンバーに先行提供中で、無料ユーザーには2026年5月初旬に開放予定。Lorebookも同様にc.ai+先行だ。
正直なところ、PSQ2とLorebookの両方が有料限定というのは、無料ユーザーにとってはもどかしい。ただ、ChatGPTが月$20、Claudeが月$20であることを考えれば、月$9.99で専用のキャラクターAI体験が得られるのは価格としては妥当だろう。
ChatGPTやClaudeとの違い
「キャラクターAIなんてChatGPTのカスタムGPTで十分では?」という疑問は当然ある。
Character.aiの強みは、キャラクターとの会話に特化していることだ。ChatGPTやClaudeは汎用AIであり、キャラクターの一貫性維持やLorebook的な世界観管理は設計思想に入っていない。ChatGPTのMemory機能は便利だが、「このキャラクターはこの世界に住んでいて、こういう歴史がある」という構造的な情報管理とは別物だ。
一方で、ChatGPTやClaudeの方が基盤モデルとしての性能は高い。複雑な推論や長文生成ではまだ差がある。Character.aiはあくまで「キャラクターとの会話体験」に振り切っている。
PipSqueak 2が開く可能性
PSQ2とLorebookの組み合わせで、いくつかの使い方が現実的になる。
長編ストーリーの共同創作がより実用的になる。キャラクターが100回前の会話の伏線を拾えるようになれば、ユーザーとAIで長期的な物語を紡ぐことが可能になる。今までは10回程度で記憶が途切れていたが、その壁が押し上げられた。
教育・語学学習での活用も面白い。「イギリスの1800年代に住む教師」のようなキャラクターにLorebookで時代背景を持たせれば、没入型の語学レッスンが成り立つ。キャラクターが時代設定を忘れなくなったことで、この使い方の実用性が一段上がった。
ただし、まだ完璧ではない。応答末尾の文字化け問題が解消されるまでは、プロダクション品質とは言いがたい。Character.aiがこの初期バグにどれだけ早く対処するかが、PSQ2の評価を左右するだろう。
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