「この条件の企業リストを作って」とAIに頼むだけ — 営業リスト作成を変えるAnysite
営業リストを作る作業は、いまだに地味に時間を食う。ツールにログインして、業種と地域と従業員数でフィルタをかけ、出てきた企業から担当者を探し、メールアドレスを別のツールで当てにいく——。この一連の「画面をポチポチする時間」を、まるごと会話に置き換えようとしているのが Anysite だ。
9月13日のProduct Huntで459票を集め、その日のトップに立った。派手なデモがあるわけではないのに票を伸ばしたのは、「AIエージェント時代のデータ取得はこうなる」という筋の良さが刺さったからだと思う。
何をするツールなのか
Anysiteのコンセプトは「あなたのAIエージェントの中に住むB2Bデータレイヤー」。使う側は、普段使っているAIアシスタントに普通の言葉で頼むだけでいい。
たとえば「東京にある従業員50〜200人のSaaS企業をリストアップして、そこのマーケ責任者の名前とメールも付けて」と話しかけると、条件に合う企業と、その中の人物、現在の役職、メールアドレスまで返ってくる。地域・業種・規模で企業を絞り、担当者情報でエンリッチする、という営業リスト作成の王道フローが、チャットの往復だけで完結する。
肝は、これが**MCP(Model Context Protocol)**または REST API 経由で動く点だ。Claude、Cursor、Codex、OpenCodeといったエージェントにAnysiteをMCPサーバーとして追加しておけば、それぞれのツールの中から自然言語でデータを引ける。専用の管理画面を覚える必要がない。
実際には企業リストだけでなく、各種ソーシャルメディアやWebサイトからのデータ取得も1つのインターフェースに束ねている。「Webのデータ取得口をエージェントに1個生やす」感覚に近い。
「ChatGPTに聞けばいいのでは?」への答え
この手のツールを見ると、まず「LLMに直接聞けば済むのでは」と思う人がいるはずだ。私も最初はそう思った。だが、汎用のチャットAIは学習時点の知識か、せいぜいWebブラウジングでのふわっとしたデータしか返せない。企業の最新の従業員規模や、担当者の現在の役職・実在するメールアドレスといった構造化された鮮度の高いデータは、専用のデータソースがないと埋められない。
Anysiteが担うのはまさにそこで、LLMの「言葉を理解して段取りする力」に、「実データを引いてくる手足」を接続する役回りだ。エージェントが賢くなるほど、こうした信頼できるデータ供給源の価値は上がる。ここがAnysiteの立ち位置の面白さだと思う。
従来のWebスクレイピング/自動化ツール(ノーコードでスクレイパーを組む系)との違いも明快だ。あの手のツールは「取得ロジックを事前に組む」発想だが、Anysiteは「欲しいものを言葉で頼む」発想。セットアップのハードルが根本的に低い。
料金
料金体系はクレジット制で、やや細かい。整理するとこうなる。
- MCP Unlimited: 月30ドル(約4,500円)。MCPリクエスト無制限。ClaudeやCursorなどAIツールから使うならこれが軸。ただしREST APIは含まない
- Starter: 月49ドル(約7,300円)。7日間の無料トライアルと1,000クレジット付き
- 従量課金: 1,000クレジットあたり2.90ドル。要サブスク、最低チャージ20ドル、クレジットは12ヶ月繰り越し
クレジットの数え方は共通で、1クレジットで「プロフィール1件/検索ページ1枚/投稿リスト1つ/Webページ1枚の解析」のいずれかが取れる。なお、かつてあった無料枠は2026年3月1日に廃止されている。無料でお試し、という入口が狭くなったのは残念なところだ。
「AIツール内でデータを引きたいだけ」なら月30ドルのMCP Unlimitedが分かりやすい。バッチ処理やスケジュール実行、独自システムへの組み込みが必要になって初めて、CLIやREST APIを含む上位を検討する、という順序でいいだろう。
この仕組みが広げる可能性
Anysite単体は「便利なデータ取得ツール」だが、MCPネイティブという設計を踏まえると、もう一段先が見えてくる。
たとえば、リスト作成で止まらず、そのままエージェントに一連の営業準備を任せる使い方だ。「この条件で企業を50社出して、各社の最近のプレスリリースを要約して、刺さりそうな一言を添えた下書きメールまで作って」——Anysiteでデータを引き、同じエージェントの推論で要約と文面生成まで回す、という流れが1つの会話で成立しうる。データ取得と文章生成の間にあった「ツールをまたぐ手作業」が消える。
もうひとつは、定点観測の自動化だ。CLIやスケジュール実行と組み合わせれば、「特定業界で新しく資金調達した企業を毎週リストアップして通知」といったモニタリングを、専用SaaSを増やさずにエージェント側の仕組みだけで組める。営業だけでなく、競合調査やマーケットリサーチにも効く。
こうした使い方が現実になるかは、返ってくるデータの精度と鮮度、特にメールアドレスの当たり具合にかかっている。ここは公式の主張だけでは判断しきれず、実データで検証すべき部分だ。B2Bデータは提供元によって精度の差が大きい領域なので、本番投入の前に自社の既知リストで答え合わせをするのが賢い。
総評
Anysiteは、「AIエージェントの手足になるデータ層」という、これから確実に増えるカテゴリの分かりやすい実例だ。画面を操作する時代から、エージェントに頼む時代へ——その移行を営業リストという身近な題材で見せてくれる。
一方で、無料枠の廃止でお試しの入口が狭くなった点、そしてB2Bデータの精度という本質的な課題は残る。派手さはないが、普段からClaudeやCursorをハブに仕事をしていて、そこにデータ取得を寄せたい人には素直にハマるはず。逆に、たまにリストが欲しいだけの人には、月額を払ってまで、とはならないかもしれない。自分のワークフローがどれだけエージェント中心になっているかで、評価が割れるツールだと思う。
関連記事
AIにWebを読ませるならまずこれ — GitHub13万スターのFirecrawlが支持される理由
FirecrawlはWebページをLLM向けMarkdownに変換するAPI。無料で月1,000ページ、JS描画も対応。使い方・料金・Browse AIとの違いを解説。
AIエージェントの一番面倒な部分を、OpenAIが肩代わりし始めた — Agents API公開ベータ
OpenAIがCodexを支えるハーネスをそのままAPI化した「Agents API」を公開ベータで提供開始。4つの構成要素、料金、Claude Managed Agentsとの違いを整理する。
エージェントが必要なツールを自分で探して、その場で課金する — 「ツール版OpenRouter」Monidの狙い
エージェントが実行時にツールを発見・比較・課金する「ツール版OpenRouter」Monid。1,700超のツールを単一残高・単一認証で使う仕組み、料金、依存リスクなどの懸念を解説。