FlowTune Media

Claude Codeのレート制限が2倍になった — AnthropicがSpaceXのGPU 22万基を丸ごと借りた背景

Claude Codeを日常的に使っている人なら、あのストレスに覚えがあるはずだ。集中してコードを書いている最中に「レート制限に達しました」と表示され、数十分間何もできなくなる。特にピーク時間帯は制限がさらにきつく、Pro契約でも実質的に使い物にならない時間帯があった。

Anthropic SpaceX

5月6日、Anthropicはこの問題に対する回答を出した。SpaceXとの大型コンピュート提携により、Claude Codeの5時間あたりのレート制限を全有料プランで2倍にし、ピーク時間帯の制限を完全に撤廃した。

何が変わったのか

変更は即座に適用され、対象はPro、Max、Team、Enterprise(シートベース)の全有料プランだ。

5時間バケットのリクエスト上限が2倍に引き上げられた。これまでOpusモデルで頻繁に制限に引っかかっていたユーザーにとっては、体感的な違いは大きい。加えて、3月末から導入されていたピーク時間帯のスロットリング(混雑時にさらに制限を絞る仕組み)が完全に撤廃された。

ただし、注意点がある。週間上限はこの発表時点では据え置きだった。5月13日に別途、週間リミットを50%引き上げる期間限定措置(7月13日まで)が追加されたが、恒久的な変更ではない。

API側の変更も見逃せない。Opus APIのTier 1で、入力トークン上限が毎分3万→50万(約17倍)、出力トークン上限が毎分8千→8万(10倍)に跳ね上がった。Claude Codeだけでなく、APIを叩いている開発者全体に恩恵がある。

SpaceXのColossus 1とは何か

この制限緩和を支えるインフラが、SpaceXが運営する「Colossus 1」データセンターだ。テネシー州メンフィスに位置し、22万基以上のNVIDIA GPU(H100、H200、次世代GB200を含む)を擁する。電力容量は300メガワット超。

Anthropicはこのデータセンターの全計算資源を独占的に利用する契約を結んだ。「全部」というのが重要だ。Colossus 1はもともとxAI(Elon MuskのAI企業)が構築したもので、SpaceXがxAIを買収した後にAnthropicへ丸ごと貸し出す形になった。

容量は発表から4週間以内に順次オンラインになるとされ、制限緩和が先に適用されたのは、この容量追加を前提にしたものだ。

Anthropicのインフラ戦略が見えてくる

今回の提携は単発の取引ではない。Anthropicのインフラポートフォリオの全体像を見ると、その規模が際立つ。

Amazonとは最大5GWの計算資源契約を結んでおり、2026年末までに約1GWが稼働する。Google/Broadcomとは5GWのTPU契約で2027年から稼働予定。Microsoftとは300億ドル相当のAzure容量を確保。Fluidstackとの500億ドルのインフラ投資もある。そこにSpaceXの300MW超が加わった。

これだけ計算資源を積み上げているのは、Claudeの需要が急拡大している裏返しだ。Anthropicの年間売上は30億ドルを超えたとされ、Claude Codeのユーザー増加がインフラ投資を加速させている構図がある。

宇宙にデータセンターを作る話

提携の中で一番目を引くのは、「軌道上AIコンピュート」の共同開発に言及している点だろう。

SpaceXは「打ち上げ頻度、質量対軌道コスト、コンステレーション運用の経験において、軌道上コンピュートを研究概念ではなく短期的なエンジニアリングプロジェクトにできる唯一の組織」だと述べている。宇宙空間では太陽光発電で電力問題が解消され、冷却も真空で有利になる——理屈としては筋が通る。

ただ、正直なところ、これが実現するのは相当先の話だ。時期もコストも具体的な数字は出ていない。AI企業のインフラ需要が地上の電力・土地・冷却の限界にぶつかるのは確実だが、その解決策が宇宙かどうかは、まだ構想レベルだと考えたほうがいい。

Claude Codeユーザーにとっての意味

今回の変更で一番恩恵を受けるのは、Claude CodeでOpus 4.7を多用する開発者だ。5時間制限2倍とピーク制限撤廃により、「朝のうちに集中して使い切る」といった時間帯ハックがほぼ不要になった。

APIユーザーにとっては、Opus APIのスループットが桁違いに上がったことが大きい。入力17倍・出力10倍は、バッチ処理や大規模なコード解析を回すユーザーにとって実務レベルの改善だ。

一方で、週間上限が恒久的に変わっていない点は留意しておきたい。5月13日の50%引き上げは7月13日までの期間限定で、その後どうなるかは明示されていない。制限の本質的な解消ではなく、インフラ拡張のペースに合わせた段階的な緩和だと理解しておくべきだろう。

Anthropicが計算資源の確保にこれだけ投資しているのは、Claude Codeが今後さらにエージェント的な方向(長時間の自律タスク実行)に進化していくことを見据えた布石に見える。レート制限の緩和は始まりであって、終わりではないはずだ。

関連記事