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「うちの会社を分かっているAI」を作る — 全LLM呼び出しに社内知識を差し込むAlmanac

AIに仕事を頼むたびに、同じ前提を毎回説明していないだろうか。「うちのプロジェクトはこういう構成で」「承認フローはこうで」「この用語は社内ではこういう意味で」——チャットを開くたびにゼロから背景を打ち込む。あの作業が地味に効いて、AIを使うほど疲れてくる。

YC 2026年夏バッチ(S26)から出てきた Almanac は、この「毎回説明する」問題を、真正面から潰しにきたエージェントだ。キャッチコピーは 「a company brain(会社の脳)を持つエージェント」。Launch HNでも話題になった。

発想はシンプル — 会社の知識を「wiki」に畳む

Almanacの中核は、自己更新する社内wiki だ。あなたが連携したツール——Gmail、カレンダー、GitHub、各種ドキュメント、議事録ツールなど——の中身を、Almanacが一つのwikiに集約していく。そしてタスクを実行する前に、毎回そのwikiを読んでから動く。

さらに面白いのは、このwikiが チームで共有される 点だ。同僚のAlmanacも同じwikiを参照する。つまり、誰かが積み上げた社内コンテキストが、チーム全体のAIの「共通の前提」になる。個人がAIに教え込んだ知識が個人で閉じず、組織の資産になっていく設計だ。

創業者のRohan Sharma、Kushagra Chitkara、Divit Shethの3人は、11年前にインドの大学入試(JEE)対策で出会った仲だという。この1年半、彼らはHarvard向け、NASA向け、そして一度は「インターネット全体」を対象にした“エージェントwiki”を作り続けてきた。「AIにはコンテキスト層が必要で、それはwikiの形をとる」という一貫した賭けの延長線上に、Almanacがある。

連携の作り方が実は賢い

多くのエージェントツールは、外部サービスと繋ぐために専用のインテグレーション(API連携)を一つひとつ用意する。だからGmailは繋がるがマイナーなツールは繋がらない、という穴が生まれる。

Almanacはここを別のやり方で解いている。独自のブラウザとターミナルを持ち、あなたが接続したアカウントにログインした状態 で動く。人間がブラウザでツールを操作するのと同じように、Almanacも自分のブラウザからツールにアクセスする。専用インテグレーションのないサービスでも、ログインさえできれば操作できるわけだ。正直、この「人間と同じ入口を使う」アプローチは、連携の網羅性という一点でかなり現実的だと思う。

使い方も日常に馴染ませてある。SlackやiMessageでAlmanacに話しかければ、組織全体のコンテキストを踏まえてタスクを実行してくれる。専用の管理画面に張り付く必要はない。

なぜ今このテーマなのか

Almanacが解こうとしているのは、業界で「エージェントメモリ」「コンテキスト永続化」と呼ばれる、今もっとも旬な課題だ。

マルチエージェントの仕組みが実運用で崩れる典型的な原因が、まさにここにある。エージェントが呼び出しのたびに会社のポリシーを忘れる、組織図を幻覚(ハルシネーション)する、同じことを二度聞いてくる——こうした「記憶が続かない」問題が、実務投入の壁になってきた。当メディアでもエージェントに記憶層を持たせる試みを取り上げてきたが、Almanacはそれを「社内wiki」という具体的な器で解こうとしている点が特徴だ。

これで何ができるようになるか

コンテキスト層がうまく機能すると、面白い使い方が見えてくる。

たとえば 新入社員のオンボーディング。「この機能の担当は誰?」「去年のあの決定の経緯は?」といった質問に、Almanacが社内wikiを根拠に答えられるなら、先輩に何度も聞く手間が減る。属人化していた「あの人しか知らない」情報が、チームの共有知に変わる可能性がある。

もう一歩踏み込むと、定例レポートや問い合わせ一次対応 の自動化だ。社内の最新状況を常に把握しているエージェントなら、「今週の進捗をまとめて」と頼むだけで、各ツールから情報を拾って組み立ててくれる。独自ブラウザでツールを横断できる強みが、ここで効いてくる。

ただし、条件付きの話でもある。社内の機微な情報をwikiに集約するということは、その情報の管理・権限設計がそのまま信頼性を左右する。誰のAlmanacがどこまで見られるのか、退職者のアクセスはどう切るのか——このあたりの運用が甘いと、便利さと引き換えに情報漏洩リスクを抱え込む。導入するなら、権限まわりの設計は最初に詰めておきたい。

まとめに代えて

Almanacの本質は、派手な新機能ではなく 「AIに毎回説明する」という誰もが抱えていた小さな苦痛を、組織の仕組みとして解こうとした 点にあると思う。エージェントメモリの決定版になるかはこれから次第だが、「コンテキスト層はwikiの形をとる」という一貫した賭けには説得力がある。詳細はYCのローンチページを参照してほしい。

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